経営者のうつ病治療の難しさ

 近年、うつ病を患う方が増え、会社や組織でメンタルケアに対する取り組みが見直されています。職場での「うつ病に関する管理者研修」や「休職者に対する職場復帰プログラムの策定」などが、これにあたります。会社組織の管理者や従業員に対するメンタルケアの取り組みは、ラインケアとも呼ばれ、公的な支援制度もあり、数年前と比較して充実が図られています。

 その一方で、会社組織のトップである「経営者」に対するメンタルケアの取り組みは遅れていると言わざるを得ません。うつ病は、誰でもかかる可能性のある病気です。特に社長という職業は、ほかの従業員と比較して大きな重圧やプレッシャーの掛かる仕事であり、うつ病を発症しやすい環境下にあります。国の調べによると、自殺者の数は年間3万人に及びます。そのうち中小企業経営者がかなりの割合を占めるとも言われており、うつ病との因果関係を想像することは難しくありません。

中小企業経営者の特性

 日本の中小企業の経営者には、下記のような傾向があります。これらの傾向は代表者への負担を増やし「うつ病」を発症させる因子ともなりえます。

  • 経営と資本、法人と個人が分離していない(社長や家族が連帯保証人である)
  • 破産や倒産によって、自宅などの財産を全て失うと思い込んでいる
  • 取引先や従業員などステークスホルダーが大勢である(社長への責任の集中)
  • 名誉、信用、プライドを重んじる傾向がある
  • 弱音を吐かない

社長がうつ病を患ったケースでは、事業の経営環境がうつ病の原因になっている可能性があります。特に中小企業経営者の場合、法人である会社と個人が分離していないため、患者である社長のうつを改善するには「医療」と「経営」双方の観点から、その原因を取り除く必要があります。