相談者のプロフィール
- 業種・規模: 不動産業(従業員18名)
- 年齢: 50代後半
- 相談のきっかけ: 「兄と弟から正反対のことを言われ続け、何を決めても批判される。どうすればいいかわからない」
相談時の状況
先代(父)が体調を崩したことで、長男である相談者が社長に就任。しかし、会社の役員である兄(常務)と弟(取締役)がそれぞれ異なる経営方針を主張し、社長である相談者はその板挟みに。
「兄は縮小・安定路線、弟は拡大・投資路線を主張していた」とのこと。相談者自身の意見を言っても「お前は考えが甘い」「そんなやり方では時代遅れだ」と双方から批判される状況が続き、会議が苦痛になっていました。
「社長なのに、自分の会社で孤立している感覚だった」という言葉が印象的でした。
支援の内容
1. 「誰の意見が正しいか」より「自分はどうしたいか」を明確にする
まず、相談者自身が「この会社をどうしたいか」を言語化するセッションを重ねました。これまで「兄と弟をどう調整するか」に思考が向きすぎており、自分自身の経営ビジョンが曖昧になっていたことが見えてきました。
「2年後にこの会社はどうあってほしいか」を書き出すことで、相談者の中に「地域密着・堅実経営」という軸があることが明確になっていきました。
2. 役割分担と「話し合いのルール」を整理する
親族経営における対立の多くは、「役割の境界が曖昧」であることが原因のひとつです。兄と弟それぞれの担当領域を明文化し、「社長の決定事項」と「役員の意見を参考にする事項」を区別するための仕組みを作りました。
「みんなの意見を聞くのは良いことだが、最終決定権は社長にある」というシンプルな原則を、会議体の中で明確にすることが重要でした。
3. 「批判への対応」を練習する
「どう言われても批判される」という感覚は、相談者の自信を大きく損なっていました。セッションの中でロールプレイを行い、批判に対して感情的にならず「自分の意思決定の根拠」を冷静に伝える練習を重ねました。
結果
- 3ヶ月後に経営方針書を作成し、全役員に提示
- 「自分の言葉で説明できるようになった」と自信が戻った
- 兄弟との関係は以前より良好に。「話し合いができるようになった」
この事例から学べること
親族経営の対立は、意見の違いより「役割の境界の曖昧さ」が原因であることが多いです。「誰の言う通りにするか」ではなく「自分はどうしたいか」を明確にすることが、経営者としての軸を取り戻す出発点になります。
自分の経営ビジョンを言語化することが、板挟みから抜け出す第一歩です。