相談者のプロフィール
- 業種・規模: 製造業(従業員18名)
- 年齢: 50代後半
- 相談のきっかけ: 「後継者がいない。体が続かなくなってきた。でも売ることへの抵抗感がある」
相談時の状況
先代から受け継いだ製造業を25年間経営してきました。業績は安定していたものの、腰痛と高血圧が悪化し、主治医から「このままでは倒れる」と警告を受けていました。
子どもは全員他業種に就職しており、社内にも後継候補がいない状況。M&Aという選択肢は頭にあったものの、「父が一生かけて作った会社を売るのは裏切りではないか」「従業員が路頭に迷うのではないか」という罪悪感が踏み出しを妨げていました。
支援の内容
1. M&Aへの不安・罪悪感を整理する
「売る=裏切り」という感覚の背景を丁寧に掘り下げました。父への思いや従業員への責任感など、複数の感情が混在していることを整理しました。
「M&Aは廃業ではなく、会社と従業員を守るための選択肢のひとつ」という視点を、事例を交えながら共有しました。
2. M&Aの基本プロセスを理解する
M&Aの流れ(企業価値評価 → 仲介業者の選定 → 候補先探索 → 条件交渉 → クロージング)を整理し、「何がどのように進むか」を把握することで漠然とした不安を軽減しました。
従業員の雇用継続を条件とした交渉戦略についても、一緒に考えました。
3. 「何を大切にしたいか」を明確にする
買収先に引き継いでほしい「会社の文化や強み」を言語化しました。これが後の交渉において「どんな相手を選ぶか」の基準になりました。
「技術力と社員の雇用さえ守ってもらえれば、あとは任せられる」という境地に至るまで、数回のセッションを要しました。
結果
- M&A仲介会社を通じて、同業の中堅企業への譲渡が成立
- 従業員全員の雇用継続を条件として確保
- 「父の会社を潰さずに、次の世代に渡せた」とのご報告
- 経営者本人は療養と休養に集中できるようになった
この事例から学べること
M&Aに対する「売ること=逃げること」という感覚は、多くの経営者が抱えます。しかし、適切なタイミングでの第三者承継は、従業員・顧客・地域への責任を果たす前向きな選択です。
「誰かに託す決断」もまた、経営者としての責任ある行動のひとつです。