相談者のプロフィール
- 業種・規模: 飲食業(3店舗、従業員15名)
- 年齢: 60代後半
- 相談のきっかけ: 「息子が継がないと言い出した。もう気力がなくなってしまった」
相談時の状況
40年以上かけて育ててきた飲食店。いずれは息子に引き継ぐことを夢見て経営してきたものの、息子から「自分のやりたいことがある」と承継を断られました。
「ならば廃業しかないか」という考えが頭をよぎり、従業員への申し訳なさと徒労感で、気力が著しく低下していました。「この年で誰かに売るなんて考えたこともなかった。でも廃業もしたくない」という複雑な心境でした。
支援の内容
1. 「承継の選択肢」を整理する
事業承継には「親族内承継」「役員・従業員承継」「第三者承継(M&A)」の3つの形があることを整理しました。「息子が継がない=廃業」という二択ではないことを確認し、選択肢を広げるところから始めました。
「従業員の中に継ぐ意思のある人がいるかもしれない」という視点が、相談者にとって新鮮な気づきでした。
2. 従業員への打診と社内承継の検討
長年店を支えてきた副店長(40代)に、経営者が意向を打ち明けたところ、「自分にできるなら考えたい」という反応がありました。その後、段階的な権限移譲と経営数字の共有を進め、1年かけて社内承継の準備を整えました。
感情的な部分では「我が子のように育てた店を手放す寂しさ」があり、その気持ちも丁寧に扱いながら進めました。
3. 引き継ぎ後の「自分の生き方」を考える
「承継後に何をするか」を考えておくことも重要なプロセスです。「引退後の自分の役割」「地域との関わり方」を一緒に考え、引き継ぎへの前向きなイメージを育てました。
結果
- 副店長が新社長となり、円満に承継
- 旧経営者は顧問として月2回関わる形で継続
- 「お店が続いてよかった。従業員も喜んでくれた」とのご報告
この事例から学べること
事業承継は「子どもに渡すか、廃業か」の二択ではありません。信頼できる従業員や第三者への承継も、大切な選択肢のひとつです。経営者の「想い」を受け継いでくれる人を見つけることが、納得のいく承継への道になります。
「誰に渡すか」だけでなく、「どう渡すか」を丁寧に考えることが、後悔のない承継につながります。