相談者のプロフィール
- 業種・規模: 製造業(従業員25名)
- 年齢: 60代前半
- 相談のきっかけ: 「体がしんどくなってきた。でも規模を縮小することへの罪悪感が強く、誰にも言えなかった」
相談時の状況
40年以上かけて築いてきた製造業。かつては35名の従業員を抱える地域の中核企業でした。しかし、業界全体の縮小と後継者不足が重なり、売上は10年前の6割程度に低下していました。
経営者自身は体力の衰えを感じながらも、「従業員の雇用を守らなければ」という使命感から縮小の決断ができずにいました。「縮小することは、自分の敗北だと思っていた」という言葉が印象的でした。
相談当初は眠れない日が続き、「会社が潰れる夢を何度も見る」という状態でした。
支援の内容
1. 「このまま続けた場合のリスク」を数字で整理する
現状維持のまま5年後・10年後を試算しました。「縮小しない場合」のほうが雇用へのリスクが高くなる可能性を、客観的な数字として確認することで、「縮小=従業員への裏切り」という思い込みが揺らぎ始めました。
2. 「誰に何を任せるか」を整理する
経営者への業務集中が深刻でした。製造・営業・経理のすべてに経営者が関与していた状態を整理し、現場リーダーへの権限委譲計画を策定しました。
「任せることへの不安」は強くありましたが、まず小さな権限から委譲を始め、現場リーダーが予想以上にしっかり機能することを経験することで、信頼感が生まれていきました。
3. 「縮小の形」を一緒に設計する
単なる人員削減ではなく、「事業の選択と集中」として縮小を設計しました。
- 利益率の低い下請け案件を段階的に減らす
- 得意分野の高付加価値案件に絞り込む
- 早期退職希望者には退職金の上乗せで応じる
従業員への説明文も一緒に考え、「縮小の理由と今後のビジョン」を誠実に伝えることを重視しました。
結果
- 1年後に従業員数を18名に縮小
- 一人当たりの売上が増加し、収益性が改善
- 「従業員に感謝された。やってよかった」とのご報告
- 経営者の睡眠状態も改善し、週1日の休日を確保できるようになった
この事例から学べること
「縮小は失敗」という思い込みは多くの経営者が持っています。しかし「持続可能な規模で健全に経営する」ことは、従業員にとっても経営者にとっても、より良い選択であることがあります。
「縮小する決断」もまた、経営者としての責任ある判断のひとつです。